ハイブリッドERで使用するCT=徳島市の県立中央病院

 救急搬送者に迅速な診断と治療を施して救命率の向上につなげようと、徳島県立中央病院(徳島市)は、コンピューター断層撮影装置(CT)を使いながら初期治療を行う県内初の「ハイブリッドER(救急救命室)」を始めた。6月の導入後、交通事故や労災事故のためドクターヘリで運ばれた重傷者4人(8月16日時点)を治療し、全員が一命を取り留めた。
 
 1階の救命救急センターの隣に設けられた血管造影装置を備えたCT検査室を活用し、患者のけがや病気の状態を診断。CTの診察台で止血や開腹手術を行う場合もある。

 これまでCT検査室が離れた場所にあり、救命救急センターで応急処置をして患者の容体をある程度安定させた後、CTで診断して治療する必要があった。ハイブリッドERでは診断と治療を同時進行で行えるため時間が短縮し、患者の負担を減らせる。

 従来は1人当たりの治療に2時間以上かかる例も少なくなかったが、ハイブリッドER導入後に治療した4人は42分~94分。新たな救急患者を受け入れやすくなった利点もある。

 ただハイブリッドER用のCTは救急患者以外の診断にも使用しており、専用にできないという課題もある。

 大村健史救急外科・外傷センター長は「始まって間もないが、診療時間が短くなり手応えを感じている。より効果的に運用できるよう、スタッフの習熟度を上げるなど工夫したい」と話している。