<人間は善良であればあるほど、他人の良さを認める>トルストイ。ロシアの文豪の至言に触発されたわけではないが、少し考えた。台風は災害だけを引き起こす、根っからの悪なのか。振り返ると、認めるに値する良さは、あるにはある

 例えば、記録的な少雨で吉野川の早明浦ダムが干上がった2005年の夏。隣の香川県では水道供給を抑制するなど住民生活に支障を来していたが、台風の雨がダムを一気に満杯に。渇水が解消した

 台風の水量は大きなダム数千個分に相当するとか。貴重な資源である。さらに、今季のサンマ漁が昨年の不漁から一転、好調な出足となったのは、台風の多発で海水温が下がったからとの見方もある

 ええとこあるでないで、と褒めたいのはやまやま。残念ながら台風がもたらすのは、被害の方が断然多い。早明浦を満たした台風もひどい爪痕を残し、全国で21人が亡くなった

 必要なだけ雨を降らせてお引き取りを―といかぬものか。何年か前、台風の進路を操ることができるという研究結果を米国企業が発表した。とんと音沙汰がないが、実現は困難なのか

 やはり「必要なだけ・・・」と祈るしかない。台風21号が四国をうかがっている。名は「チェービー」。ツバメを意味する穏やかな韓国語だが、惑わされぬよう。今回も警戒を厳重に、避難は早めに。