家庭で育てることが難しい乳幼児を養育している徳島赤十字乳児院(小松島市)が2016年度から、面会を通じて子どもの心のケアを行う「面会ボランティア」の養成に初めて取り組む。背景には、施設に預けっ放しで面会を拒否する保護者が増えている事情がある。職員以外の第三者が親代わりを務め、子どもたちが愛情に接する機会を増やす。
面会ボランティアは、保護者代わりとなって面会室で子どもと過ごし、会話や読み聞かせなどを行う。1回の面談時間や頻度は未定だが、子どもたちが「自分だけが構ってもらえている」と感じる時間をつくり出す。
乳児院では現在、0~4歳児33人が生活している。虐待や両親の離婚、病気による養育困難が入所の主な理由で、看護師や保育士ら職員41人が24時間体制で面倒を見ている。
子どもたちが楽しみにしている時間の一つに保護者との面会がある。しかし、養育を拒否して面会に来ない親が10年ほど前から徐々に増え、今では3割の子どもが面会を受けられない状況にある。面会室から聞こえる笑い声を、うらやましがったりねたんだりするケースが見られるという。
乳児院では、1人の職員が子ども1、2人を担当して入所から退所まで一貫して養育しているが、人格形成には院外の第三者との関わりも重要になる。面会が望めない子どもの心のケアや情緒の安定化を図るため、面会ボランティアの養成に取り組むことにした。
希望者はまず乳児院で通常のボランティア活動を経験し、遊びや掃除、修繕作業を通じて施設の雰囲気や子どもとの接し方を学ぶ。その上で、乳児院が面会ボランティアとしての適性を判断する。
新居啓司院長(57)は「面会には子どもたちに社会とのつながりを持たせる役割がある。人格形成の基礎となる時期であり、一歩進んだ養育に努めたい」と話している。