徳島市出身の考古・人類学者鳥居龍蔵(1870~1953年)の生涯と業績を振り返る県立博物館での企画展「鳥居龍蔵 世界に広がる知の遺産」が来館者から好評を得ている。考古学や人類学の専門知識がなくても親しめるよう、鳥居の人物像に焦点を当てたほか、展示資料の8割が初公開とあって関心を集めた。1月23日の開始から千人余りが訪れており、今月28日まで開かれる。
企画展は、徳島市の県文化の森総合公園にある同館1階企画展示室で行われている。
全389点の展示物の中で来場者の目を引いているのが、鳥居が外国語を習得するために使っていた練習ノート。このノートは初公開で、モンゴル語、フランス語、アイヌ語の単語や発音が紙いっぱいに書かれている。外国語教育が今ほど盛んでなかった時代に、語学力を地道に磨いていた努力の跡が見て取れる。
鳥居の研究に協力した家族の活躍にも焦点が当てられているのが特徴。妻のきみ子が人類学者として高い評価を受けていたことが分かる手紙や、4人の子どもたちによる翻訳原稿やスケッチ、写真が並ぶ。
平日は30人、土日曜日は50人前後が訪れている。徳島市八万町中津浦の自営業富本眞司さん(72)は「これまで知らなかった鳥居の姿に触れることができた」と話していた。
企画展は、鳥居龍蔵記念博物館が鳴門市から現在の県文化の森総合公園内に移転し、5周年になったことを記念して開かれている。記念博物館の下田順一学芸員は「郷土の偉人に親しむ絶好の機会。多くの人に見てもらいたい」と来場を呼び掛けている。
期間中は、同公園内の県立図書館や文書館でも関連する催しが行われている。21日には海外の考古学者らによる講演会が21世紀館である。