国土交通省は24日、那賀町和食郷で小型無人機ドローンを使った政府初の貨物輸送実験を実施した。ドローンは約1キロの食料品を積んで、約400メートル先の目的地まで届け、実験は成功した。
国、県、町などから約20人が参加し、住民からパンと牛乳、ゆで卵の宅配依頼があったとの想定で実施。午前11時27分、食料品を積んだ直径1・1メートル、高さ約50センチのドローンが、同町和食郷の徳島新聞鷲敷専売所近くの町道を離陸した。
ドローンは高度50メートルまで手動操縦で上昇した後、中山川を挟んだ町道まで秒速3メートルで弧を描くように自動航行。目的地上空で手動操縦に切り替え、離陸から4分10秒後に着陸した。届いた食料品に損傷などはなかった。
復路は、飛行中や離着陸時の衝撃を測る機器とパック入りの生卵を積んで飛行した。操縦はドローンの開発やコンサルティング業務を行うブルーイノベーション社(東京)の職員が担当した。
実験は当初、午前9時半からの予定だったが、降雨と強い風に見舞われたため、約2時間延期。飛行距離も約100メートル短縮した。
国交省は周辺の約190戸に、ドローンによる宅配の需要や自宅上空を飛ぶ際の要望についてアンケートを実施。実験結果と合わせて、早期事業化に向けた検討材料にする。
町の担当者は「実験成功に安堵している。安全面などの環境整備が進み、山間部の買い物難民問題の解消につながれば」と話した。
実験で荷物を受け取った石原忠人さん(80)=同町和食郷=は「足が悪いので、ドローンで荷物を運んで来てくれるようになれば助かる」と話した。
那賀町はドローンを活用した地域活性化を目指し、「県版地方創生特区」第1号に認定されたことから、実験の場に選ばれた。