業務試行の成否が鍵
中央省庁の地方移転で、徳島県が誘致を提案している消費者庁は政府方針原案に「8月末までに結論を得る」と位置付けられる見通しとなった。飯泉嘉門知事が消費者庁誘致の意向を表明してから約8カ月。開会中の県議会2月定例会で、移転実現の見通しや県の取り組みをただす質問が相次ぐなど県民の関心は高まっている。徳島移転は実現するのか。これまでの動きを振り返った。
「徳島は消費者庁の誘致にチャレンジする」。知事は昨年7月、都内であった全国知事会地方創生対策本部の会合に県庁からテレビ会議システムで参加し、同庁を軸にした政府関係機関を誘致する方針を打ち出した。
政府関係機関の地方移転は人口減少の克服と東京一極集中の是正に向けた安倍政権の看板施策だ。徳島への移転候補は消費者庁(消費者委員会含む)と同庁所管の国民生活センター。移転先として県は同庁が県庁、センターは鳴門合同庁舎と提案している。
県は誘致実現に向け▽全国に先駆けて食の安全・安心や消費者行政に注力している▽全国屈指の高速ブロードバンド環境が整っている-など他県との違いをアピールする。ただ同庁との協議では「なぜ徳島か」「国会対応を含め行政機能は低下しないのか」の論点で平行線をたどる。
官僚の抵抗で事務レベルの協議が進まないのは当初から想定された。風穴を開けたのは、移転に前向きな河野太郎消費者行政担当相だ。前担当相で自民党の山口俊一衆院議員の意向も踏まえ、昨年12月と今月20日に徳島入りした河野氏は、業務試行を通じて移転の可能性を探る考えを示した。
「霞が関にいなければいけないのか、全国いろんなところで仕事ができるようになるのか試したい」。20日、河野氏は美馬と吉野川両市内での街頭演説で力を込めた。
消費者庁が計画する業務試行は
<1>板東久美子長官ら9人が3月13日から約1週間、神山町でテレビ会議システムを使いテレワーク
<2>4月以降、鳴門合同庁舎などで国民生活センター(相模原事務所)の教育研修業務と商品テスト
<3>7月に県庁で職員数十人による大規模テスト-の3種類。
板東氏は神山滞在中、テレビ会議で定例記者会見を行うほか、事務次官連絡会議への出席も検討。東京との距離的障壁を克服し円滑に業務を遂行できるか。徳島移転の可否を左右する重要なポイントとなりそうだ。
消費者庁職員は約500人(非常勤含む)、消費者委員会は委員80人と職員約30人(同)、国民生活センター相模原事務所職員は30人いる。移転が実現すれば、県人口の増加に直結するだけでなく経済効果も期待できる。
12日には商工、金融など県内各界トップで構成する誘致協議会が発足。「新しい人の流れの突破口を徳島から切り開く」とする行動宣言を政府、与党に提出するなど県民の機運も高まっている。
一方、与野党国会議員の一部や消費者団体は依然、移転への懸念を示している。県は消費者問題解決や紛争手続きを担う「消費生活専門会議」を設置したり消費生活相談員を増員したりして払拭(ふっしょく)に努める考えだが、国や誘致協議会と連携し、各方面に丁寧な説明を積み重ねる必要性を指摘する声も上がっている。