168センチ、60キロと小柄だが、ピッチを忙しく駆け回り、闘志あふれるプレーで存在感を見せる。今季加入したスペイン出身のMFシシーニョ(32)はここまでチーム最多の30試合に先発で出場し、愛称通り「シシ」奮迅の活躍を続けている。
J2福岡のベテランFW城後に憧れ、Jリーグでのプレーを志した。昨年来日を果たし岐阜で主力として出場した。徳島でも豊富な運動量と経験で屋台骨を担う。夏場以降の順位上昇に「昇格プレーオフ圏も見えてきてチームの士気は高い。この勢いで残り試合も勝ちたい」と意気込む。
子どものころ、出身地アルバセテのチームのGKコネホ(現コスタリカ代表コーチ)が好きで、最初はキーパーをやっていた。しかし身長が足りずフィールドプレーヤーに転向し、一気に才能を開花させた。
15歳で名門バレンシアのユースに加入。U-17(17歳以下)代表として2003年のU-17世界選手権で準優勝を果たした。その後、1部のバリャドリードやギリシャ、韓国などでプレーした。
同じスペイン人のロドリゲス監督は良き話し相手だ。「監督はサッカーの話が大好き。戦術など知識も豊富で勉強になる。練習は本当に厳しいけどね」と笑う。
7月に加わったバラルとも呼吸はぴったり。「2人ともスペインリーグで長くプレーしていたから、どこに球が欲しいとか、タイミングは分かる」。最前線まで見通す広い視野と正確なパスは攻撃面でチームの大きな武器になっている。
サッカーとともに進化を続けているのが日本語だ。「今日はプレスが良かった」「応援で力をもらいました」。試合後のインタビューでは一部の質問に通訳を介さず日本語で応じる。
来日当初は「語学力はほぼゼロ」だったがテキストを買い、ネットでスペイン人の日本語講師の動画を見て学習を重ねた。小堀通訳は「先日は僕の電話のやりとりを隣で聞き取っていた」と上達ぶりに目を丸くする。
阿波踊りを楽しみ、朝食をとる行きつけの店ができるなど、徳島の生活にも慣れてきた。「その店は家庭のような雰囲気。今度は店長に遠征のおみやげを渡したい」。日本、そしてホームタウンにしっかり根を下ろしつつある頼れる助っ人が、悲願達成の主役になりそうだ。