「砲丸野口」のリングネームで活躍した元プロボクサー野口泰雪さん(56)=徳島市北沖洲4=が、体調不良で自身のジムを閉鎖した。残ったグローブなどの用具は、現役時代に所属していた阿波市土成町吉田の「川田ボクシングジム」に寄贈。果たせなかったチャンピオン育成の夢を、恩師の川田武司会長(71)=吉野川市鴨島町喜来=に託した。
野口さんは漫画「あしたのジョー」に憧れてボクシングを始め、1985年に川田ジムからプロデビュー。リングネームは中学時代に砲丸投げで四国大会2位に入った実績から川田会長が命名したという。全日本ライト級2位につけるなど、プロ通算23戦11勝(11KO)12敗の成績を残して92年に引退した。
家業の木工業を継いで、2010年には徳島市福島2に「野口ボクシング道場」を開設した。しかし12年に脳幹出血で倒れ、左半身まひなど重度の障害が残った。
リハビリを重ねて回復したものの、17年にはバイクで帰宅中に信号無視の乗用車と衝突して右拳を負傷。「これ以上、無理はできない」と道場を閉め、グローブやヘッドギアなど30点を、かつての所属ジムに贈った。
川田ジムでは、選手や練習生30人が汗を流す。用具を持ってジムを訪れた野口さんは、久しぶりにリングに上がり、川田会長と軽くスパーリングをして往時を懐かしんだ。
野口さんが「チャンピオンの夢を託したい」と言うと、川田会長は「思いは同じ。このジムからチャンピオンを出したい」と応じた。