自民党総裁選は、連続3選を目指す安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長の一騎打ちとなった。選挙戦は2012年以来6年ぶりで、実質的に首相を選ぶ選挙とあって国民の関心も高い。

 総裁選では、5年9カ月に及ぶ安倍政権の総括と合わせ、向こう3年間、内政、外交などで両氏がどのような方針で臨もうとしているのか、知りたいことは山ほどある。

 ところが、北海道地震の影響で3日間、演説会などを自粛するという。もともと、今回の演説会や討論会は5回程度しか予定されていなかった。12年の総裁選の17回から激減している。自粛によって選挙期間が事実上、短くなりさらに減る可能性もある。

 選挙戦への影響を考えればこの際、日程を変更してもよかったのではないか。震災対応に万全を期すのは当然だが、政策論争をおろそかにしてはならない。

 党は、論戦の回数や時間の確保に努めるとともに、両氏も国民にしっかりと語ってもらいたい。

 首相が高支持率を維持している最大の要因は、経済政策だ。「アベノミクス」によって雇用が増え、低迷を続けていた株価も上昇した。経済指標はおおむね好調だ。

 一方で物価目標は達成できず、金融、財政などにもひずみが出ている。首相は「道半ば」「この道しかない」と繰り返すが、石破氏は地方創生を旗印にアベノミクスの修正を掲げている。

 アベノミクスの検証や、アベノミクス後も見据えた経済・財政運営について丁寧に説明する必要がある。

 憲法改正の進め方も大きな争点だ。首相は、党の改憲案を秋の臨時国会に提出すべきだとの考えを示した。特に9条では現行の1、2項を残して新たに自衛隊の根拠規定を置く案を提唱している。

 石破氏は、9条の戦力不保持を定めた2項の削除が持論だが、「丁寧に理解を得ていくべきだ」として、臨時国会への提出には否定的だ。

 共同通信社の世論調査では憲法改正への関心はまだまだ低い。国民意識と乖離(かいり)した状態で進めるべきではない。

 先の通常国会では、森友・加計(かけ)学園問題などの不祥事が相次ぎ、安倍政権の国会運営や政治姿勢に対して不信感が広がった。

 そうしたことを踏まえ、石破氏は「正直、公正」をキャッチフレーズにしているが、党内からは「個人攻撃だ」などと批判が起きている。

 さらに、党は総裁選に関し新聞・通信社に「公平・公正な報道」を求める文書を送付した。記事や写真の掲載で候補者を平等に扱うよう注文を付ける異例の内容である。

 こうした風潮に、政権への批判を排除しようとの思惑がある、と指摘する議員もいる。憂慮すべき状況だ。

 活発な論戦が政治への関心を呼び、ひいては党の活性化にもつながる。決して低調な選挙戦にしてはならない。