消費者の細かなニーズに合わせたユニークな保険商品が相次いで登場し、徳島県内でも売り上げを伸ばしている。病気予防への取り組みに対して保険料の一部を払い戻す「健康増進型」の医療保険が増えているほか、安全運転対策を盛り込んだ自動車保険、終活やレジャーに関する保険などが商品化されている。背景には、人口減少に伴う各社の競争激化や、小規模事業者が参入しやすくなった保険業法の改正があるようだ。
東京海上日動あんしん生命(東京)は2013年と15年、医療とがんの保険で所定の年齢になれば掛け金から給付金の差引額が払い戻される「Rシリーズ」を相次いで売り出した。医療は契約時の年齢に応じて60~80歳、がんは70歳に定められ、給付額がなければ全額戻る。健康を促すのが狙いだ。
掛け捨てタイプが一般的だけに、注目を集め、県内代理店の一つハートフルエージェント(徳島市)でも、従来商品に比べて3割以上契約を増やしている。
「健康増進型」では、1日平均8千歩以上2年間歩くと、保険料の一部が戻る特約付きの「あるく保険」も関心が高いという。
県損害保険代理業協会長も務める山本高弘社長は「契約者が健康に注意し病気予防につながる。保険会社側も保険金の支払いを減らせる」と話す。
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命(東京)は18年4月、加入後に肥満度や血圧の数値が改善したり、禁煙に成功したりした場合に、保険料の一部が戻る特約付き「じぶんと家族のお守り」を発売した。7月には全国の申込件数が5万件を突破。県内代理店のアワーサポート(徳島市)でも、件数を伸ばしているという。
安全運転対策を盛り込んだのは、あいおいニッセイ同和損保(東京)の「タフ・見守るクルマの保険」。急加速や急減速、ふらつきなどが多ければ注意を促す放送が流れるとともに、蓄積したデータで運転傾向を診断した結果をスマートフォンに送る専用車載機を独自に開発し、保険加入者に提供している。
17年10月に販売を始め、代理店の保険システム(徳島市)では、高齢者を中心に月5件ほどコンスタントに契約があるという。
500円程度の保険金で必要な時間だけ加入する、お手軽な保険も次々に生まれており、好評だ。ゴルフやハイキングなどでのけがの補償が賄える三井住友海上火災(東京)の「1DAYレジャー保険」や、親や友人から車を借りた際にかけるあいおいニッセイ同和などの「1日自動車保険」が人気を呼んでいる。
業界内の競争激化を受け、既存商品での戦略を見直す社もある。三井住友海上火災の代理店・アイル保険サービス(吉野川市)は、労働災害の補償や従業員からの損害賠償リスクに対応する業務災害保険の営業に2年前から力を入れている。労災事故による損害賠償額が高額化しているにもかかわらず、保険への関心を持つ企業が少なかったためだ。営業強化してからこれまで約40社が加入した。
岡澤亨社長は「高齢者の免許返納が増え、自動車保険の扱いが減っている。別の種類の保険で売り上げを伸ばさないと生き残れない」と強調する。
2006年の法改正 小規模業者の参入後押し
小規模事業者が参入しやすくなった保険業法は2006年に改正された。ペットや弁護士費用など保険の種類は幅広く、全国的に登録業者が増えている。
保険業を行うには通常、金融庁による免許が必要。少額短期保険は、契約者1人当たりの給付保険金額が1000万円以下などの要件が整えば登録するだけで事業ができる。
金融庁によると、06年度に2社だった登録業者は年々増加。17年度は前年度比9社増の98社に上り過去最多となった。日本少額短期保険協会(東京)によると、一般の保険会社が扱わないユニークな商品を扱い人気を集め、総売り上げも伸びているという。
四国では唯一、死亡保障のあおい少額短期保険(徳島市)が登録されている。親会社で葬祭業のイマデヤ(同市)が販売しており、17年度の新規契約件数は、前年度を120件上回る過去最高の349件を記録した。
葬儀費用などを想定し、死亡した際に給付する。掛け金が少ないのが特徴で、例えば100万円保障の場合は40歳男性の加入なら月額700円で、70歳男性の加入でも2800円で済む。99歳まで契約を継続できる。
09年度にサービスを始め、17年度末時点の総契約件数は2573件。70歳前後の加入者が多いという。契約件数が伸びている理由について香川宗敬社長は「子や孫に負担をかけたくないとして、終活の準備をしようとする人が増えている」と話す。