終戦後の一時期、炭鉱のあった勝浦町生名で少年期を過ごした岩本馨さん(80)=静岡県御殿場市=が”心の古里“に思いをはせた望郷歌「桜ロマン街道」を作った。地元の町おこしグループ・生名ロマンの会が振り付けし、3日に生名谷川沿いの通称ロマン街道で開かれる「勝浦さくら祭り」で初披露する。
歌詞は4番まであり、特産のミカンや生名谷川沿いの桜並木、四国霊場20番札所・鶴林寺を盛り込みながら「恵み豊かに 吾郷(わがさと)に永久(とわ)に輝け 絆の玉よ」などと詠んでいる。
岩本さんが勝浦町で過ごしたのは、小学校高学年から中学1年ごろまでの多感な時期。現在はミカン畑が広がる生名地区の山中に、1943年から49年にかけて「徳島炭山」があり、終戦後、父親が炭鉱労働者だった一家は、仕事を求めて勝浦へ移住。閉山後は同じく炭鉱のあった上勝町に移り、その後は小松島市でも暮らし、18歳で徳島を離れた。
20年ほど前、東京の親戚と一緒に勝浦町生名にミカン狩りに訪れたのをきっかけに、町へ時折、足を運ぶように。「町並みは随分と変わったが、自然の美しさは昔のままだった」と感慨にふけった。
同級生の集まりにも参加していたが、昨年は体調を崩し、出席を断念。作詞が趣味の岩本さんは、旧友や古里への思いを込めた詩を作り、インターネットの無料楽曲提供サービスで曲も付けて、生名ロマンの会員でもある同級生に送った。
受け取ったロマンの会は、祭りのテーマソングにしようと、舞踊を教えている増井公
子さん(80)=同町横瀬=に振り付けを依頼し、練習を重ねてきた。3日正午と午後3時から特設ステージで歌と踊りを披露する。
岩本さんは「地元の人が気に入ってくれ、踊りもつけてもらい、感無量です」と話している。
■桜ロマン街道■
生名谷川 桜の並木
弘法大師の 鶴林寺には
白い可憐な みかんの花が
浮かぶ花弁 手ですくい
秋に黄金の みかんが揺れる
大師ゆかりの 大樹の銀杏
桜並木は 県内一と
流れ清流 勝浦川に
知恵の先人 潜水橋
エイッとばかりに 少年時代
ロマン街道 白装束の
同行二人の 菅かさかぶり
杖を路ずれ 鶴林寺にと
生名里山 発電所
回る水車が 皆の里に
ロマンあふれる 谷川桜
春はピンクに 秋には紅葉
銀杏絨毯 生名の誇り
恵み豊かに 吾郷に
永久に輝け 絆の玉よ