山の口明けを行う樫地さん(左)と古城さん=つるぎ町一宇剪宇

 つるぎ町一宇剪宇(きりゅう)地区の住民有志が、県西部の山間地に伝わる農耕始めの神事「山の口明け」の継承に取り組む。毎年1月2日に農家が自分の畑で行い、正月の風物詩となっていたが、年々減り、町内で続けているのは同地区の樫地盛(さかり)さん(84)だけとなった。神事について知らない世代が増えつつあるため、2日に樫地さんの畑で行われた神事に住民2人が参加し、復活に向けて作法を学んだ。

 山の口明けは1年間の家内安全と豊作を祈る神事。畑に3本のカヤを三角すいの形にして立て、その中に松やサカキ、米、大豆、干し柿、御幣などを供える。手を合わせて祈った後、畑の土にくわを入れて酒をまく。

 2日に樫地さん方であった神事では、イモ類を栽培する急傾斜地の畑に長さ1メートルほどのカヤが立てられた。同地区の農業、古城(こじょう)幸男さん(78)と切上(きりかみ)登喜男さん(71)が神事の様子を見守り、共に豊作を祈った。

 町商工観光課などによると、50年ほど前まで同町や美馬、三好両市の剣山山系の急傾斜地では多くの農家が神事を行っていた。しかし、兼業農家の増加などで次第にやめていったという。

 古城さんは「子どものころはどの畑でも行われていたので懐かしい。来年から自分も行いたい」と話す。樫地さんは「新年に神事を行うと気持ちが引き締まる。伝統を受け継いでいってほしい」と語った。